現役自衛官を対象にしたモデルナ製ワクチンのコホート調査で発熱と倦怠感が大きいことが示される

 職域接種で用いられているモデルナ製ワクチンの重点的調査(コホート調査)の中間報告が厚労省の予防接種・ワクチン分科会の副反応検討部会で公表されていました。

 現役自衛官を対象としたものであるため、性別が男性に偏っていることに留意が必要です。ただ、2回目の接種後に 60% から38度以上の発熱が報告され、50% 超が中等度以上の倦怠感を訴えた事実は知られているべきでしょう。

 

報告された資料

 厚労省には科学審議会が定期的に開かれており、そこに属する『予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会』は2週間に1度のペースで開催されています。

 2021年7月21日には第64回が行われ、その際の資料3(PDF)が該当の資料です。

 タイトルの「新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査)健康観察日誌集計の中間報告」に違和感を持つ人もいるかもしれませんが、これは新型コロナワクチンが『特例承認』であることが理由です。

 本来は「投与開始初期の重点調査を行った上で問題がなければ正式承認」となる運びですが、この部分が省略されているのです。したがって、予想に反する調査結果が示される可能性があることを頭の片隅に置いておく必要があるでしょう。

 

中間報告で示されていた内容

コホート調査の対象は男性の現役自衛官

 コホート調査の取りまとめを行っているのは順天堂大学です。順大は医療従事者を対象にしたファイザー製ワクチンの先行接種においてもコホート調査を実施していましたから、実施者は適切と言えるでしょう。

 今回、モデルナ製ワクチンを接種しての調査に協力しているのは自衛官です。

モデルナ製ワクチンの被接種者の人口統計学的特性(1回目)

 職種は全体の 95% が自衛官。男女比で見ると 95% が男性です。したがって、男性の現役自衛官を対象にした調査だと言えるでしょう。

モデルナ製ワクチンの被接種者の人口統計学的特性(2回目)

 ちなみに、コホート調査で2回目接種が完了しているのは4000人弱。1回目が完了している人の 33% ほどです。

 また、2回目接種が完了した20代は5ポイント低いと資料には示されています。したがって、この部分を認識した上で評価が重要と言えるでしょう。

 

2回目接種の2日目にピークが来る「38度超の発熱」と「強い倦怠感」が懸念点

 “益荒男” と呼ぶべき現役の男性自衛官がモデルナ製ワクチンを接種した後に示した発熱は以下のとおりです。

モデルナ製ワクチン接種後の発熱

 1回目の接種で発熱症状を示したのは全体の 5% にも満たない水準です。しかし、2回目では状況が全くの別物です。

 2回目接種の2日後に37.5度以上の発熱があった自衛官は約75%。全体の 60% は38度を超える高熱に見舞われています。「高熱は2日もすれば収まる」と擁護したところで「割に合わない」と考える人が出てくることは止むを得ないでしょう。

 38度以上の高熱になるなら、強い倦怠感や頭痛を感じる人の割合が増えるのも当たり前です。

モデルナ製ワクチン接種後の全身反応

 2回目接種の2日後に「中等度の倦怠感」を感じたのは約40%。高度の倦怠感を感じた 15% を加えると、全体の 65% が強い倦怠感を覚えることになります。

 しかも、これは “副反応が出やすいと言われる20代” が1回目接種よりも5ポイント低い状態での数値です。また、より副反応が出やすい女性は今回のコホート調査の対象外です。この事実を無視して「とにかくワクチンを接種しろ」との強要は絶対に慎むべきでしょう。

 

過去に新型コロナ罹患歴があると副反応が現れやすい

 なお、新型コロナの既住歴(=過去に患って現在は治癒している)があるワクチンの被接種者だと1回目接種から発熱・倦怠感が報告されています。

新型コロナ既住歴のワクチン接種への影響

 おそらくですが、プロ野球・広島カープの鈴木誠也選手がこのケースに該当していると思われます。

 「健康な20代」で「新型コロナの既住歴あり」と副反応が出やすい条件を2つ満たしていたからです。「新型コロナの既住歴」は無症状感染だった場合は検査で陽性反応が示されない限り、当人が気づくことは不可能です。

 そのため、今後も同様のケースは起こり得るでしょう。

 理由は『新型コロナの既住歴』や『(アジア圏での存在が指摘される)ファクターX』が「1回目のワクチン接種」に相当している可能性があるからです。

 接種回数と副反応の重さが比例するなら、今後 1〜2 回で限度を超えると思われます。イギリスやイスラエルでは3回目接種によるブースターが検討されており、その点に関する注意を払う必要があると言えるはずです。