日本政府は『入院率』という間違った指標を撤廃すべき

 2021年4月に政府分科会は新型コロナ対策のために『入院率』という指標を導入したのですが、これが「医療逼迫を訴えるためのツール」として悪用される事態を招いています。

 この指標は即座に撤廃すべきでしょう。理由は「『入院率』は医療介入が必要な新型コロナ罹患者が実際に入院した割合を示す指標ではない」からです。

 

新型コロナ対策の入院率とは

 問題の新指標である『入院率』は2021年4月8日に開催された第1回新型コロナウイルス感染症対策分科会で導入されました。資料(PDF)には以下の記載があります。

ステージ判断の指標

 入院率とは療養者数に対する入院者数の割合をいう。

 注2 療養者数とは入院者数及び自宅・宿泊療養者数等を合わせた数をいう。

 『累計陽性者数=療養者数+回復者数+死者数』ですから、療養者は「他者に新型コロナを感染させる可能性がわずかにでもあると思われる人」との認識で十分でしょう。

 ただ、問題となるのは「入院率 40% が正常」という分科会の初期設定です。

 入院率 26〜40% は『ステージ3』、入院率が 25% 以下なら『ステージ4』なのです。若者に多い無症状者が大量に報告されても「とにかく入院させるのが正しい」との判断基準が設定されているのは問題と言わざるを得ないでしょう。

 

発端は昨年(2020年)2月の厚労省・結核感染症課からの病床確保依頼

 なぜ分科会が「新型コロナ患者を入院させるべき」との基準を要求するかと言いますと、危険な感染症は患者を全員入院させることが原則だからです。その証拠に厚労省が2020年2月に通達(PDF)を出しています。

厚労省からの通達

 新型コロナ陽性者は昨年2月の時点で「感染症指定医療機関における感染症病床に入院させなければならない」と法律で決まっていました。

 ところが感染症と言っても危険度や感染力は様々です。エボラ出血熱・ペスト・結核・コレラ・梅毒・インフルエンザ・麻疹はいずれも感染症ですが、すべての感染症で “症状の軽微な患者” にまで入院を求めることはありません

 なぜなら、感染症指定医療機関や感染症病床数は限られているからです。感染症病床を有する指定医療機関は全国に351医療機関・1752床しか存在しません。この前提を無視した『新型コロナ対策』は論ずるに値しないでしょう。

 

昨夏の「新型コロナを指定感染症から外して5類に」との動きを潰して、1類を上回る疾病に格上げした厚労省

 ところが、厚労省は安倍前首相が示した「新型コロナの指定感染症からの見直し」とは真逆の動きをしました。政令の改正で新型コロナを『エボラ出血熱などの1類感染症よりも危険な病気』として扱える法改正(PDF)をしたのです。

感染症法に基づく措置

 このような “お膳立て” がされているのですから、新型コロナ陽性者は原則入院との対策が打ち出されるのは必然です。

  1. 新型コロナはエボラ出血熱よりも危険
  2. 感染症患者は指定医療機関の病床に入院させること

 と、法律で定められているのです。分科会が「患者が入院できてないのは問題だ」との間違った認識に基づく誤った指標を制定した責任の一端は厚労省にもあります。

 

 全員に『VIP待遇』をしようとすればパンクするのは当たり前です。しかも、治療費が無料になるという “タダ券” を配布している状況なのですから事態が好転する兆しは見当たりません。

 根本的な部分から大鉈を振るわない限り、日本の『コロナ対策禍』は収束する気配が生まれることはなさそうです。