感染研・鈴木基氏らのグループが五輪1ヶ月前に出した「デルタ株で都内の重症者は数百人」との予測は大外れに終わる

 東京オリンピックの無観客開催を要求した専門家が6月に行った予測では「デルタ株による感染拡大で都内の重症者は(緊急事態宣言を発しても)数百人に達する」と言うものでした。

 ただ、その予測は大外れだった訳です。何度も同じ失敗を繰り返しているのですから、予測を行った厚労省アドバイザーボードの専門家に “何らかの責任” を負わせるべきでしょう。

 

感染研・鈴木基氏らのグループが2021年6月中旬に行った予測

 6月16日に行われた「第39回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード」で国立感染症研究所の鈴木基氏らのグループが『6~9月東京における流行プロジェクション』を行っています。

 内容は「デルタ株の感染拡大で東京都での陽性者数や重症者数がどうなるか」と言うものです。

デルタ株の影響・大、1000人で緊急事態宣言

 デルタ株の影響が大・小など複数のシナリオに言及されていますが、重症者数の予測は散々な結果に終わりました。

デルタ株の影響・小、1000人で緊急事態宣言

 (政府や分科会が)「医療崩壊の可能性」に言及して世間を脅したにも関わらず、重症者数の実態は『デルタ株の影響・小』にも該当しなかったのです。

 そのロジックの基となる予測を行った当事者が古瀬祐気氏の可能性もありますが、誰が予測を行っていたとしても厳しく批判されるべきと言わざるを得ないでしょう。

 

事実

東京都の重症者数は「週平均60人」で頭打ち

 まずは都の公式発表を確認しましょう。東京都が発表した「重症者の属性」の週平均をグラフにすると下図のようになります。

東京都が発表した入院中の重症者数

 『デルタ株の影響・大』の場合は7月初旬で重症者数は「100人超」と予想されていたため、この時点で予測の精度に疑念が持たれることになります。

 ただ、『デルタ株の影響・小』も「外れ」が濃厚となっています。こちらの想定でも重症者数は「100人」に達する予想なのですが、その水準にするには「現状の倍以上の新規重症者」が必要です。雑な予測との批判は避けられるものではありません。

 

「重症化の定義」がおかしいので予測が役に立たない

 予測者(や彼らの肩を持つ人)から「後出しでは何とでも言える」と開き直る声も出てくるでしょう。しかし、重症化の前提条件が間違っているのですから予測が外れるのは当然です。

鈴木氏らのグループによる予測

 これまでの国内データを参考に重症化率は65歳未満0.4%、65歳以上3.0%とした。重症者は感染後に遅れて重症化し、その後2週間ベッドを占有するとした。

 「重症化率の設定値」は明らかに間違っていますし、重症者病床を占有する期間は年齢によって大きく異なります。

 例えば、大阪府で今年1月の第3波の際に報告された「70代の重症化率は10%超」でした。これは「2021年1月に大阪府から報告された70代の新規陽性者は約1300名」で「同時期の70代の新規重症者は約140名」だったからです。

 東京都は大阪府とは違って新規重症者数は公表していませんが、重症化率は同程度と見なせるでしょう。したがって、65歳以上の重症化率が 3.0% など前提そのものが致命的に間違っているのです。

 

 「複雑な数式を用いた予測だ」と主張したところで『外れてばかりの天気予報』と同じです。世間が知りたいのは「傘が必要な天候なのかを判断する正確な情報」であり、それができない人物に公的な肩書きを与えることは “百害あって一利なし” ではないでしょうか。