コロナ対策禍で婚姻件数と出生数の減少に直面した日本政府が「少子化は危機的な状況」との認識でバラマキによる対策を始める
小倉将信・少子化対策担当大臣が11月1日の閣議後の会見で「日本の少子化は危機的な状況にある」との認識を示したと TBS などが報じています。
小倉大臣は閣議後の会見で、コロナ禍で婚姻件数や出生数が減少するなど、日本の少子化は危機的な状況にあるとの認識を示しました。
そのうえで、結婚支援や全ての子育て世帯への支援を充実させることが急務だとして、家賃や引っ越しなど結婚に伴う新生活にかかる費用を支援する「結婚新生活支援事業」の対象を、現状の世帯所得400万円未満から500万円未満に緩和する方向で調整していることを明らかにしました。
「コロナ禍が問題」とメディアが報じていますが、実際は「コロナ対策禍が問題の元凶」です。
また、現行の社会保障制度は少子化だと行き詰まるのは時間の問題です。現行制度を維持するために現職の大臣が出生を促すことは問題の先送りにしかならないでしょう。
年間出生数と婚姻数の推移
日本ではコロナ対策禍によって少子化が加速しました。国立社会保障・人口問題研究所の『将来推計人口』と厚労省の『人口動態統計』から出生数と婚姻件数をグラフにすると以下のようになります。
コロナ前の2019年の時点で日本では少子化はすでに進行していたものの、将来の出生数を示す傾向にある婚姻件数は年間60万件で踏み止まっていました。
ところが、コロナ対策禍が始まると婚姻件数は年間50万件強にまで減少。落ち込みの原因は「コロナ対策で他者との出会いが制限されたこと」が主要因と言わざるを得ないでしょう。
2022年の出生数は『推計・低位』の水準が続く深刻な状況
婚姻件数が出生数に影響を与えるのは少し先のことになりますが、今年・2022年の出生数は『推計・低位』の水準で推移する深刻な状況に見舞われています。
『推計・低位』の場合、2022年の年間出生数は約75万人に留まります。2021年の「辛うじて年間出生数80万人割れを回避」した状況から少子化が悪化していることは誰の目にも明らかでしょう。
同時に「現行の社会保障制度が持たない」ことは確定的になっており、これを認めたくない政府が慌てて「少子化は深刻な問題」と取り繕っているに過ぎないのです。
『現役世代の所得 30%』と『将来世代が償還する赤字国債』による「高齢者向け社会保障制度」が瓦解するのは時間の問題
政府は「子育て支援を充実させる」とアピールしていますが、これは単なるアリバイ工作です。
日本の現役世代は所属の 30% を社会保障費として徴取されており、社会保障の給付は大部分が高齢者向けであることが『高齢社会白書(令和4年版)』で示されています。
ただ、日本の給与総額は2021年は約225兆円と国税庁から発表(PDF)されています。
225兆円の3割は67.5兆円ですから、100兆円を超える社会保障の給付費を現役世代の所得だけで賄うことはできません。不足分は赤字国債で将来世代かの前借りが常態化しており、ここにメスを入れることが政治の責務になるでしょう。
高齢者の絶対数は今後も増え続けます。若者や子供たちを犠牲にした新型コロナ対策が最優先にされたのですから、社会保障の給付費は今後も増大し続けることでしょう。
シルバー・デモクラシーで現役世代からの所得移転を生業とする政治家や医療が政策に強い影響力を与える仕組みが温存されているのですから少子化に歯止めがかかりことはありません。
今後は出産適齢期にある若い夫婦に対する「妊娠および出産の要請」が行われても不思議ではないでしょう。今の政治はそれだけズレているからです。