「再生可能エネの積極的導入による脱炭素社会の達成」を目標にした電力政策で電力危機に陥った日本

  日本テレビが「日本列島は『電力危機』とも言える事態に陥っているのか」との記事を掲載し、それが Yahoo! にも転載されています。

  今夏や今冬は気象条件次第で「計画停電」が実施されてもおかしくない状況です。その原因は「再生可能エネルギーを積極的に導入することで脱炭素社会を達成しようとする政府の方針」なのです。

  エネルギー政策を根本的な部分で間違った事実を認め、速やかに方針転換を図る必要があるでしょう。


火力発電所の採算が取れなくなり、供給に該当する『絶対的な発電量』が不足したことが原因

  電力が足りない理由は記事でも言及されています。火力発電所の廃止が相次いでいるからです。

  これは経産省の電力・ガス基本政策小委員会にも記されています。2022年3月25日に開催された第46回で提出された資料 4-1 (PDF)には以下の記述があります。

  火力発電による供給力は減少傾向にあり、発電単価の高い石油火力は廃止が急ピッチで進んでいます。2021年度以降では毎年 100万kW の供給力が失われているのです。

  その理由は「稼働率の低下」と「卸電力市場の価格低迷」による採算性の悪化です。火力発電所の採算を悪化させたのは政府の『脱炭素を重視したエネルギー政策』なのですから、それを採用した政府と支持したマスコミが責任を取らなければなりません。


脱炭素で火力発電に逆風を浴びせ、再生可能エネ最優先で卸電力市場からも追い出す

  菅義偉・前首相の在任時から日本政府は『カーボン・ニュートラル』に舵を切り、岸田首相は「脱炭素で経済成長をする」との所信表明演説を行なっています。これでは火力発電所を持つ大手電力会社” は廃止を考えるでしょう。

  なぜなら、二酸化炭素を排出する火力発電は『脱炭素』とは相反するため、採算の取れていない火力発電所から順次閉鎖することは合理的だからです。

  発電所は「発電した電力を売却」することで収益を得ます。

  ところが、再生可能エネルギーが全量固定買取制度で優先的に買い取られるため、火力発電所の稼働率が悪化。しかも、卸電力市場は “価格急騰で採算が悪化した新電力” を守るために『上限』が設定されたことで火力発電所を維持するメリットが消失しました。

  稼働するのは有事の際だけですから採算は取れません。平時は維持費だけがかかりますし、有事の際の販売価格も上限があるため赤字になるからです。大手電力会社が火力発電所を粛々と閉鎖していくことになると思われます。



  火力発電所の供給力を維持したいのであれば、国が電力会社から設備と人員を買い取るべきです。もしくは『火力発電所の供給力』による恩恵を最も受ける “電力転売ヤーと揶揄される新電力” に火力発電所の維持費を負担させる制度を作るべきです。

  制度設計とエネルギー政策の双方を間違えたことが電力危機の原因なのですから、政府と政府の方針を支持・応援したマスコミや政治家の責任は問われなければならないでしょう。