『電力需要の減少』で太陽光発電にも出力制御が要請される状況で「送電網の整備が急務」と主張する日経新聞

  「太陽光発電で作られた電気が企業の操業が停止するゴールデンウィーク中に余る事態となっており、送電網の整備が急務」と日経新聞が主張しています。

  しかし、日経新聞の主張は根本的に間違っています。理由は電力需要が日本中で存在しないため、送電網が整備されていたとしても太陽光発電事業者への出力制御要請は出されることになるからです。

  太陽光発電で作られた電気を無駄にしなくないのであれば、『電力需要を増やす産業政策』を実施することが “王道” と言えるでしょう。


需要がない状況で「生産された電気を無駄にするな」と主張する日経新聞

  日経新聞が記事で主張している内容は以下のとおりです。

  太陽光発電でつくった電気が余る事態が各地で頻発している。4月以降、東北電力など大手電力4社が再生可能エネルギーの発電事業者に太陽光発電の出力を抑えるよう要請した。ゴールデンウイークの大型連休中は多くの企業が休むため電力需要が減る。再生エネを無駄にしないためにも送電網の整備が急務だ。

  経済紙の主張内容としては「あまりに低レベル」と言わざるを得ません。電力需要が存在しないのですから、送電網を整備したところで消費が増えることはないからです。

  新聞への『需要』が存在しない状況で『販売網』を整備しても意味がないことと同じです。

  「『印刷した新聞』を無駄にしないために『販売網』を整備しろ」と “識者” から提言されれば、各メディアは主張内容を根本から否定するでしょう。これと同じ残念な主張を「電力」に対して日経新聞は行なっていることは深刻と言わざるを得ません。


送電網の整備には約4兆円が必要だが、誰が費用負担をするのか

  日経新聞は「再生可能エネルギーを無駄にしないために送電網を整備せよ」と主張していますが、問題は「誰が送電網の整備費用を負担するのか」でしょう。

  4月26日に開催された経産省の『電力・ガス事業分科会』に属する小委員会でも「電力ネットワークの次世代化」が議題(PDF)となっており、その中で「3.8〜4.8 兆円の投資が必要」と言及されています。

  “市場よりも割高な価格が設定されている再生可能エネルギー” を普及させるための送電網を整備するために4兆円前後が必要となるのです。

  送電網の整備費を電気代に上乗せされた場合、電力消費者には何のメリットもありません。『再生可能エネルギー割賦金』による電気代の上昇分は大きくなり、そこに『送電網の整備費』も上乗せされることになるからです。

  再生可能エネルギー推進派によりますと、「再生可能エネは既存の発電手法よりも安い」そうですから送電網の整備費は再エネ事業者に拠出させるべきでしょう。



  発電した電気を無駄にしたくないのであれば、発電量に見合った『需要』を産業政策などで作り出すべきでしょう。しかし、電気代は使用量に応じて決まるため、『単価の高い電気』は消費者にニーズと合致しない問題もあります。

  それに発電量が天候任せの再生可能エネルギーに合わせて需要を調整するのは「統制経済」と変わりありません。

  『生産能力の向上』が期待できない補助金産業に力を入れたところで “成長のサイクル” にはならない現実を直視する必要があると思われます。