『オミクロン株が拡大中のイギリス』での死者数は『デルタ株による感染拡大が深刻なドイツ』よりも少ない

 イギリスのジャヴィド保健相が「オミクロン株による感染者数は1日あたり約20万人に上る(と健康安全庁が推定している)」と言及したと BBC が報じています。

 『オミクロン株』の脅威を大きく取り上げることで対策強化に正当性を持たせたいのでしょう。しかし、デルタ株の感染拡大が深刻なドイツと比較すると過剰反応であることは否めません。この点に留意すべきと言わざるを得ないでしょう。

 

イギリスでの新型コロナによる感染状況

 BBC が記事の中で言及しているイギリス国内での新型コロナによる感染状況は以下の部分です。

 イギリスでは13日、新規感染者が5万4661人報告された。ウイルス検査で陽性判定後28日以内に死亡した人は38人だった。

 イギリスでオミクロン変異株への感染が確認された人は、これまでに4713人となっている。だがジャヴィド保健相は、現在の1日当たりの感染者は約20万人に上ると、英健康安全庁(UKHSA)が推定していると述べた。

 イギリス政府が発表している統計データを確認しますと、今年7月以降の新型コロナによる新規陽性者数は「4万人前後で推移」しており、今月(=12月)以降は「5万人超」の状態です。

イギリスでの新型コロナによる新規陽性者数(日別)

 ただ、死者数は新規陽性者に対して低い水準となっています。これがドイツとの違いと言えるでしょう。

 

「オミクロン株が拡大中のイギリス」と「デルタ株が蔓延中のドイツ」

 イギリス(人口・約6700万人)とドイツ(人口・約8300万人)での新型コロナによる感染被害は以下のとおりです。

 イギリスの『人口100万人あたりの新型コロナによる死者数』が今年の8月以降は「2前後」で推移していることに対し、10月末にイギリスの水準を上回ったドイツは「4」と倍以上にまで数値が悪化しています。

 イギリスでの新型コロナによる死者数は「1日あたり100人台」であり、オミクロン株による死者は1名が確認された段階です。デルタ株と比較した際の毒性(や重症化率)は「格段に低い」ことが統計的に示されつつあることを考えると、過剰対策になる可能性は大いにあるでしょう。

 

ドイツは依然としてデルタ株(B.1.617.2)による感染が継続中

 ドイツでの新型コロナによる感染拡大はデルタ株(B.1.617.2)によるものであるとロベルト・コッホ研究所が12月9日付で発表した資料(PDF)で示されています。

ドイツでの新型コロナの変異株が占める割合

 オミクロン株(B.1.1.529)による感染も報告されてはいるもののわずか8例です。デルタ株は同じ週に5118例の報告ですから、現状では「誤差の範囲」と見なされることでしょう。

 

 当局が『陽性者数至上主義』に陥っていると「オミクロン株の感染拡大」を理由にした対策が採られますが、“毒性がデルタ株よりも極端に低いオミクロン株” による感染拡大では重症者だけでなく要入院者も劇的に少なくなります。

 対策の費用対効果は「デルタ株による感染時期よりも悪化」することになるため、この事実が無視された対策を行うことは厳しい批判を浴びた上で損害賠償の責任を負わなければならないと言えるでしょう。