「経済よりもコロナ」と所信表明をした岸田首相、対策を “振り出し” に戻して『ゼロコロナ』を目指す

 12月6日に行われた所信表明演説で岸田首相が「財政よりも経済、経済よりもコロナ」の優先順位に言及したと日経新聞が報じています。これは「コロナ対策を “振り出し” に戻す」と同義であり、日本経済はボロボロになるでしょう。

 

「確率(や期待値)に基づいた考えはできない」と表明したに等しい岸田首相

 岸田首相の所信表明演説は首相官邸のホームページで公開されています。「新型コロナ対策」に言及したのは以下の部分です。

 大事なのは、最悪の事態を想定することです。

 オミクロン株のリスクに対応するため、外国人の入国について、全世界を対象に停止することを決断いたしました。

 まだ、状況が十分に分からないのに慎重すぎるのではないか、との御批判は、私が全て負う覚悟です。国民からの負託は、こうした覚悟で、仕事を進めていくために頂いたと理解し、全力で取り組みます。

 新型コロナについて、細心かつ慎重に対応するとの立場を堅持します。感染状況が落ち着いていますが、コロナ予備費を含めて十三兆円規模の財政資金を投入し、感染拡大に備えることとしました。

 岸田首相は『コロナ禍での最悪の事態』を想定して動く様子ですが、『コロナ対策禍による最悪の事態』は無視しています。

 コロナ対策を講じたことで「GDP の落ち込み・(若者を中心に)自殺者の増加・婚姻数の減少・少子化の進行・物流網の混乱」などが弊害として生じています。これらの問題で生じる『最悪の事態』を考慮していない姿勢は首を傾げざるを得ません。

 

将来世代にツケを回す国債発行で賄われる『岸田政権のコロナ対策』

 岸田政権が「財政よりも経済、経済よりもコロナ」と日経新聞に書かれた根拠が以下の部分です。

 危機に対する必要な財政支出は躊躇(ちゅうちょ)なく行い、万全を期します。経済あっての財政であり、順番を間違えてはなりません。

 経済をしっかり立て直します。そして、財政健全化に向けて取り組みます。

 岸田首相は「順番を間違えてはならない」と発言し、「経済あっての財政」と優先順位を明らかにしています。しかし、その『経済』よりも『細心かつ慎重に対応する新型コロナ対策』が重要と位置づけているのです。

 『コロナ対策』による最大の利益享受者は「現在の高齢者」や「高齢者ビジネスで収益を得ている業界」です。一方で国債の償還責務を負わされるのは「(まだ生まれてもいない)将来世代」です。

 「新型コロナ対策は『100年債』の発行で賄うべき」と主張した政治家や識者がいたと記憶していますが、“現実” を直視すべきでしょう。

国債発行計画

 財政制度分科会が取りまとめた資料(PDF)から「短期国債しか買い手が付かない現実」が浮き彫りになっているのです。『100年債』は「夢のまた夢」であり、財政軽視の姿勢は痛い目に遭うことでしょう。

 

効果が疑問視されるワクチンパスポートを活用して経済活性化を目指すセンスのなさ

 また、岸田首相が上述の方針を堅持する限り、国の財政赤字は過去に類を見ないペースで増加することになるでしょう。財政再建を行う前段階と位置付ける『経済活動』を戻すことすら消極的だからです。

 通常に近い経済社会活動を取り戻すには、もう少し時間がかかります。

 それまでの間は、断固たる決意で、新型コロナでお困りの方の生活を支え、事業の継続と雇用を守り抜きます。

 【中略】

 ワクチン・検査パッケージを活用した行動制限緩和の方針に基づき、通常に近い経済社会活動の再開に取り組みます。

 政府や尾身茂氏が率いる分科会は「ワクチンパスポートではない『ワクチン・検査パッケージ』だ」と主張するでしょうが、『ワクチン・検査パッケージ』の中身は「ワクチンパスポート」です。

 制限をかけられたままで経済が「通常に近い状態」に戻ることありません。

 “経済が戻らないよう制限をかけ続ける政府” が「対策で落ち込んだ損失を『将来世代からの借り入れである国債』を使って補填し続けようとしている」のです。今後は増税と少子化に苦しむことになるでしょう。

 

 “名門・宏池会” のトップが『悪夢の民主党政権』と同レベルだったという現実は悲惨な将来を予感させます。将来世代の負担となる赤字国債を発行して『ゼロコロナ』を目指すのですから、『貧困の拡大』が起きることは避けられないと思われます。