井上伸氏の「維新では(新型コロナから)国民の命を守れない」との主張には致命的な誤りが存在する

  国公労連中央執行委員で雑誌編集者の井上伸氏が『新型コロナによる人口100万人あたりの死者数』を持ち出し、「維新では国民の命を守れない」と主張しています。

  井上氏の政治的な立ち位置から上述の主張をしたのでしょうが、これは致命的な誤りがあります。なぜなら、“立憲民主党(または日本共産党)が支援する政治家” が大阪府知事であってとしても結果は同じだったからです。

  この認識が欠落しているのは問題と言わざるを得ないでしょう。


井上伸氏のツイート内容

  井上氏が行なったツイートは以下のものです。

  井上氏は国公労連の中央執行委員であり、政治的な立ち位置は “立憲共産党” と言えるでしょう。『身を切る改革』として「公務員の給与削減」を掲げる大阪維新の会とは対立関係にあります。

  大阪府で新型コロナによる死者数が多いことは事実ですが、それはデータから理由を探ることは可能です。少なくとも「維新の対応が新型コロナによる死者数の増加を招いた」との主張は誤りと言わざるを得ない状況にあります。


井上伸氏が見落としている現実

1: 大阪など近畿圏では『アルファ株』による第4波で死者数が多く計上された

  まず、大阪府で新型コロナによる死者数が多い理由は「今年4月から5月にかけて『アルファ株』による第4波による影響」です。これは80歳以上での人口10万人あたりの新規陽性者数と死者数を比較すると明らかです。

  大阪では『80歳以上の人口10万人あたりの週別・新規陽性者数』が4月末に「80.9人」を記録。第4波での『70代の人口10万人あたりの週別・新規陽性者数』のピークが「53.8人」でしたから、異常な状況と言えるでしょう。

  一方で東京での『80歳以上の人口10万人あたりの週別・新規陽性者数』は第4波の時点では「20人強」でした。

  第5波では大阪で記録された『人口10万人あたりの新規陽性者や死者』は東京を下回っています。そのため、イレギュラーな状況を(政治的に対立する相手への)批判材料として使うべきではないことは明らかです。


2: 専門家でさえ「第5波での感染が急速に収束した理由」を説明できない

  井上氏の主張を正しいのであれば『今夏の第5波での感染が急速に収束した理由』を科学的根拠に基づく説明ができるはずです。

  今春に大阪と東京で『アルファ株』による新型コロナの感染が起きましたが、被害には大きな差があったからです。「(第4波では)何が差を分けたのか」の説明ができれば『第5波が収束した理由』も合わせて説明できることでしょう。

  しかし、現状では厚労省アドバイザリーボードのメンバーである “感染症の専門家” でさえ、説明することができないのです。

  それを「政治家の対応」と主張するなら、根拠を示すべきです。また、下記で指摘する問題点への説明も合わせて行う責任も負うべきです。


3: 第5波で『東京都の50代』が『大阪の50代』よりも被害が深刻だった理由を説明できるのか?

  第5波では “東京都の50代” が記録した『人口10万人あたりの週別・新規陽性者数』は「大阪府の50代の2割増」だったにも関わらず、『人口10万人あたりの週別・死者数』は「約2倍」という状況でした。

  井上氏のロジックでは『大阪府での新型コロナの被害は第5波でも深刻』なはずですが、データは真逆であることを示しています。この “不都合な事実” を説明する責務が井上氏にはあるはずです。

  大阪府サイドは「新型コロナワクチンの接種が進んだので『(アルファ株より感染力が強い)デルタ株が蔓延する中でも陽性者数を抑制でき、死者数は今春より少なかった」と主張できるのです。

  新型コロナの感染を『政治の対応』で減らせるなら苦労はしないでしょう。


  そもそも『政治の対応』で新型コロナの感染拡大が防げるなら完全な政治案件です。「『感染症の専門家』が出る幕はない」と断言し、政府分科会の解散を訴えるべきなのではないでしょうか。