シンガポールが規制強化に転換したのは「人口比で見た新型コロナによる死者数が深刻」が大きい

 新型コロナワクチン接種が進んでいるシンガポールが新型コロナの感染拡大を受け、規制を強化する方針を採用した CNN が報じています。

 直近28日で陽性反応を示した 98.2% が軽症と記事で言及されていますがシンガポール政府は規制を強化しました。その理由は「人口比で見た場合の新型コロナによる死者数が思わしくないから」でしょう。

 

『明るい北朝鮮』と揶揄されるシンガポールは権威主義と相性が良い

 三浦瑠麗氏は「シンガポールは権威主義の罠にはまり出しているのでは」と懸念を示していますが、シンガポールは『明るい北朝鮮』と揶揄される「一党独裁国家」です。

 日本のような自由権は保証されていません。

 そもそも権威主義が根付いた国家であり、国民からの支持を繋ぎ止めるためにも「政府の採った方針は正しい」と示さなければなりません。それが「新型コロナは対策で抑えられる」との間違った方針を採り、自滅の道を突き進む結果を招いているのでしょう。

 

シンガポールの『人口比で見た新型コロナによる死者数』は危険水準

 シンガポールが新型コロナ対策を再び強めた理由は死者数が増えているからでしょう。人口比(=人口10万人あたり)で見た場合の死者数が『世界平均』にまで達してしまったからです。

 赤道に近いシンガポールは「冬季の感染拡大」とは無縁で「アルファ株による感染拡大」にも見舞われませんでした。

 しかし、インドネシアと同様にデルタ株による感染拡大に直面人口比で見た場合の死者数は日本よりも深刻な状況です。

 「新規陽性者の 98% は軽症」と主張しても、死者数の水準は芳しくない現実があります。国民を守るためには「制限の強化」をせざるを得ないと考えられます。

 

若者が数値を上げる陽性者数は無視して良いが、死者数の増加には留意が必要

 新型コロナの場合、感染者数(=新規陽性者数)は重要な指標ではありません。なぜなら、ほとんどが軽症で済む健康な若者(や子供)が数値を押し上げているからです。

 しかし、今回のシンガポールのように『人口比で見た死者数』が世界平均を上回った場合は政府による介入が正当性を帯びる場合があることも事実です。

 特にシンガポールは人口の8割が新型コロナワクチンの2回目接種を終えています。ワクチンが機能しているなら『人口比で見た新型コロナによる死者数』が世界平均を上回ることは起こり得ないはずです。

 ところが現実には世界平均を上回ってしまっているのです。世界は「下降トレンド」ですが、シンガポールでの死者数の伸びは日本などよりも深刻であることは明らかです。

 したがって、何も対応せずに静観することを選択するのは極めて困難と言えるでしょう。死者数の観点からは今回のシンガポール政府の対応は「止むを得ないもの」として理解を得られるのではないでしょうか。