首相官邸、厚労省の公式見解に反する形で「感染予防効果はある(ので新型コロナワクチンを接種すべき)」と主張
首相官邸の公式ツイッターが「新型コロナワクチンには感染予防効果がある」と厚生労働省の公式見解とは異なる主張を投稿しています。
ワクチン接種は「新型コロナ対策における手段の1つ」だったのが「目的」に変わったと言わざるを得ないでしょう。厚労省は「感染予防効果は確認されていない」との見解を示しているのです。効果を示す根拠があるなら首相官邸がそれを示すべきでしょう。
首相官邸の公式ツイッターが行ったツイートの内容
首相官邸(新型コロナワクチン情報)の公式ツイッターアカウントが行ったツイートは以下のものです。
◤#新型コロナワクチン◢
— 首相官邸(新型コロナワクチン情報) (@kantei_vaccine) September 30, 2021
ワクチン接種によって社会全体の感染予防効果が高まり、感染者数も大きく減少してきたことで、ようやく社会経済活動の正常化が見えてきました。ワクチン接種を引き続きよろしくお願いします。
#コロナワクチンナビ で接種会場を検索https://t.co/a8ww1YTIXq pic.twitter.com/8ZHI8N3Oq3
若者を対象に「変異株で重症化する」や「後遺症がある」と脅し、「ワクチンを接種すべき」と主張しています。問題なのは主張の根拠が示されていないことでしょう。
ワクチン接種をすることで金銭的利益を得られる界隈の主張と同じ内容を展開しているのは由々しき状況です。
首相官邸の公式ツイッターが触れていない問題点
1: 厚労省は「新型コロナワクチンの感染予防効果」を認めず
まず、厚生労働省は新型コロナワクチンの『感染予防効果』を現時点では認めていません。
感染を予防する効果については、いずれのワクチンも承認前の臨床試験では確認されていませんが、現在、多くの国又は地域でこれらのワクチンの接種が進められることでデータが蓄積されつつあります。
承認前の臨床試験で「新型コロナワクチンの感染を予防する効果は確認されていない」と認めているのです。
接種を行った国や地域では『接種後のデータ』が蓄積されていますが、それらをまとめた臨床試験結果は日本には存在しないのです。(存在するなら厚労省が採用している)
つまり、現状は新型コロナワクチンの感染予防効果は「ある」とも「ない」とも言えないのです。にも関わらず、首相官邸の公式ツイッターは「ある」と断言しています。これは問題と言わざるを得ないでしょう。
2: 若者が重症化するはフェイクニュース
次に「若い方々も重症化」と煽っていますが、これは事実と異なります。
健康な若者でも風邪(やインフルエンザ)を “こじらせる” 場合があります。それを同じことは新型コロナでも起こり得るため、重症者数がゼロになりません。ただ、大阪府から発表された20代の若者の重症化率は以下のとおりです。
- 第4波(2021年4月1日〜5月31日)
- 重症化率: 0.155%
- 新規陽性者数: 10296
- 新規重症者数: 16
- 第5波(2021年7月1日〜9月30日)
- 重症化率: 0.096%
- 新規陽性者数: 25941
- 新規重症者数: 25
20代の『デルタ株』による重症化率は 0.1% を下回る水準なのです。
対象を「20代以下」にすれば、重症化率はさらに下がります。これは『10代』や『9歳以下』の重症例は「1例あるかどうか」の水準であり、その分を換算すると重症化率は 0.05% にも満たないからです。
公開情報から上述の内容は確認できるにも関わらず、「若者も重症化する」とこれまで若者の重症例が存在しなかったように装うのは極めて悪質と言わざるを得ないでしょう。
3: 後遺症の確率は 2.5% で女性・50代および60代・基礎疾患持ちに長期化の傾向
また、首相官邸は後遺症で若者を脅そうとしていますが、これも根拠がありません。なぜなら、イギリスの統計局が5万人を対象に「後遺症」とされる症状がどれほど続いているかの調査を行っているからです。
Long Covid less common than feared - ONS study - BBC News
発熱、頭痛、倦怠感、咳、味覚・嗅覚障害などの『後遺症』を3ヶ月が経過しても少なくとも1つを抱えていた新型コロナ陽性者数は 3%。陽性判定を受けなかった人では 0.5% であったことが発表されています。
つまり、後遺症は 2.5% と言えます。ただ、この数値はさらに時間が経過する(≒4ヶ月以降になる)と低下することが確認されています。
なお、分析では女性・50〜69歳・基礎疾患持ちに後遺症発生率が高いことが示唆されたとの言及があります。そのため、後遺症で若者を脅そうとする姿勢は “別の問題” から目を背ける卑劣なものと言わざるを得ないでしょう。
『新型コロナ罹患による症状』にしても『後遺症』にしても、その可能性が高い属性を有する人に警鐘を鳴らさなければ「防げたはずの悲劇」が『原因不明の病気』として起きてしまうのです。行政にその認識が欠落しているのは大きな問題です。
『こびナビ』のセールストークを鵜呑みにし、ワクチン接種効果を宣伝しても墓穴を掘るだけであることをそろそろ学ぶ必要があるのではないでしょうか。