うるま記念病院でのクラスターで70人弱が死亡したのなら、『沖縄県での新型コロナの死者が40人増』は奇妙すぎる

 沖縄県うるま市にある『うるま記念病院』で新型コロナの集団感染が発生し、累計で70名弱の死亡が確認されたと8月中旬頃にマスコミ各社が報道をしました。

 しかし、一連の報道には疑念があります。なぜなら、うるま記念病院での最初の感染者が確認されて以降の沖縄県が発表する新型コロナの死者数は40名しか増えていないからです。“真っ当な報道機関” なら調査報道を行うべき案件と言えるでしょう。

 

琉球新報が報じたクラスターの内容

 琉球新報が8月18日付で報じた『うるま記念病院』でのクラスターに関する内容は以下のとおりです。

 うるま市の民間医療機関で発生している新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)は、県によると17日までに確認された死者数が64人となった。7月19日に最初の感染者が確認されて約1カ月となるが、収束には至っていない。

 (中略)

 7月のクラスター発生時、入院患者は270人いて、医師や看護師ら職員179人が勤務していた。入院患者のうち感染が確認されたのは64%に当たる173人で、このうち64人が亡くなった。職員の感染者は26人で死者はいない。

  • 7月19日に最初の感染者(=陽性反応者)が確認される
  • 8月17日までに県が確認した死者数は64人
  • (8月18日の時点で)未だ収束には至らず

 琉球新報だけに限らず、マスコミ各社は「(沖縄県うるま市の『うるま記念病院』で発生した)新型コロナのクラスターによって69名の死亡が確認された」と読者が認識する記事を掲載しています。

 問題なのは「その報道内容が事実なら沖縄県が発表する新型コロナによる死者数も70名ほど上乗せがされているはずなのに実際には40名に留まっていること」です。報道内容と行政の発表内容に差異があるのですから、事実確認を行う必要があるはずです。

 

沖縄県が発表している『県内での新型コロナによる累計死者数』

 まず、沖縄県がウェブ上で公開している『県内での新型コロナによる累計の死者数』です。

  • 2021年7月15日: 県内215例
  • 2021年8月29日: 県内258例

 『うるま記念病院』で新型コロナの大規模クラスターが発生したと見られている時期は「最初の陽性者が確認された7月19日」です。その当時、沖縄県での新型コロナによる累計死者数は215名でした。

 報道では「69名が(『うるま記念病院』でのクラスターで)死亡」と報じられているのですから、沖縄県内の新型コロナによる累計死者数は “8月中旬には” 280名になっているはずです。しかし、8月末で258名が県の発表値です。

 これは「県の発表内容」か「報道内容」の少なくともどちらか一方が間違った情報を発表していると言わざるを得ないでしょう。

 

可能性として考えられること

 上述のような違いが発生している理由として現状で最も有力なのは「新型コロナ以外の理由で死亡した人が含まれている」というケースです。

  1. 県は『うるま記念病院』での陽性反応歴を有する死者の累計値を発表
    • 陽性反応中の死者 → 新型コロナによる死者
    • 陰性確認(=回復)後の死者 → 死因は新型コロナには該当せず
  2. マスコミは「県が発表した死者数」を報道

 沖縄県は「『うるま記念病院』で発生したクラスターで新型コロナによる死者が累計で69名になった」と死因を言及する形での発表はしていないのです。そのため、新型コロナ以外の理由で亡くなった人も死者に含まれていると見るべきでしょう。

 そうでないなら現在進行形で新型コロナによる死者の発表を見合わせる隠蔽を行っていることになるからです。

 逆に、報道機関向けに「発表した『うるま記念病院』での死者には新型コロナが死因ではない人も含まれる」との注意をしたにも関わらず、マスコミが「県が発表した数値」を強調する形で煽っている可能性があることも事実です。

 

 したがって、「行政が正確な情報を発表しているのか」と「マスコミが発表内容を正確に報じているか」は “ファクトチェック” の対象となるべきでしょう。少なくとも、現時点で報道内容を鵜呑みにした論説をするに値しないことだけは確定しています。