病床確保の補助金を受け取りながら患者の受け入れ拒否はする病院の実態調査に国が重い腰を上げる

  日経新聞によりますと、政府がコロナ病床の活用実態を調査する方針とのことです。

  6000床を確保しているはずの東京都では約6割の3800床で医療逼迫が起きるのなら、何らかの問題が存在していることは明らかです。確保されたコロナ病床には補助金も出ているため、確保数の虚偽申告が行われている場合は詐欺事案として刑事罰に問うべきでしょう。


政府は新型コロナウイルス感染者用の確保病床(コロナ病床)の活用実態を調査する。約6000床を確保する東京都では約6割の約3800床が埋まっただけで逼迫し、入院できず自宅待機を余儀なくされる人がいる。病床確保のための補助金を受け取りながら患者受け入れに消極的な病院がないか調べる。

コロナ病床実態調査へ 政府、補助金受け消極的な病院も


確保病床数と入院患者数の推移を見ると、日経が報じた内容は事実

  日経新聞が報じた内容は事実と言わざるを得ないでしょう。なぜなら、約2000床は「コロナ患者を受け入れられない幽霊病床」である可能性が高いからです。

  厚労省が発表している各都道府県の確保病床数から東京都の値を確認すると、8月11日時点での最新版では「5967床」が即応病床数となっています。

  即応病床数は患者の受け入れ要請に即時応じられる病床数ですから、この数値よりも少ない入院患者数で医療逼迫が起きることは絶対にあり得ません。

  もし、医療逼迫が起きているのであれば「患者数が申告数よりも多い」か「確保病床数が申告数よりも少ない」のどちらかが起きていることを意味していることになります。可能性としては後者が発生しているのでしょう。


「確保病床数は建前病床」とのツイートをする医師

  『確保病床数として申告された数値』が『実際の病床数』よりも少ないと指摘する医師は実在します。

  日本テレビ系列のニュース番組への出演歴を持つ岡秀昭氏がその1人です。岡氏は「建前病床」と表現していますが、病院側が行政に申告した「確保病床数」が実態と異なっていることは否定できないでしょう。

  ここで問題となるのは「行政は『病院から申告された確保病床数に応じた補助金』を出していることです。

  “実際には存在していない病床” を「存在する」と申告して補助金を得る行為は詐欺です。したがって、そのような行為をする病院は白日の下にさらし、刑事事件として扱うべきだと言えるでしょう。


医療機関は費用の約半分が人件費

  医療機関は医療行為をすることで事前に定められた報酬を得ています。

  普通は病床を確保するだけでは報酬は発生しませんが、コロナ病床は「用意した」と申告するだけで報酬が発生します。これが補助金詐欺に走る病院が出る大きな理由でしょう。なぜなら、医療機関の主な支出は人件費だからです。

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  財務省が公表した資料(PDF)で触れられている『医療機関の費用構造』で医療サービス従事者が占める割合は 47.0%。絶対値に直すと平成30年度は約20兆円が費やされた計算になります。

  コロナ禍で「受診控え」が起きたことで病院は診療報酬が減少しています。一方で人件費による支出は維持されているはずですから医療機関の赤字額は拡大します。

  だから、確保病床数を多めに申告して補助金収入で経営状況を好転させようと画策する不届き者が出てくるのです。このような不正を行う医療機関は患者に対しても不誠実な対応をするでしょう。したがって、厳しい罰則を与えなければなりません。



  田村厚労相は20日後の記者会見で「コロナ病床の受け入れ実態を調査する」との考えを表明しています。

  「病床を確保した」と申告して(補助金を得ていながら)実際には患者の受け入れを拒んでいた同業者を批判することは医療従事者の最低限の責務でしょう。問題から目を背け、世間に対して「自粛すべき」など行動制限を呼びかけるなど論外です。

  沈黙を貫くなら、偽申告で得た補助金から給与という形で分け前を得ていた共犯者と見なされても文句は言えないはずです。

  病床確保に投じられた予算は1兆円超ですから、特に悪質性の高い医療機関は詐欺事件として告訴するなどの対応が必要なのではないでしょうか。