首相が「20日以内に重症者800人超」と言及したイスラエル、重症者と死者が昨夏の水準に到達

  WHO が「9月までブースター接種は見合わせるべき」との声明を出す中、イスラエル政府は8月1日から「60歳以上を対象にした3回目の新型コロナワクチン接種」を敢行しています。

  イスラエルのベネット首相は「(3回目の接種による)知見で世界に貢献する」と主張していますが、これは表向きのパフォーマンスです。国内の感染状況は「20日以内に重症者(が現状の4倍に該当する)800人超の恐れ」と自らが言及した内容がすべてです。

  したがって、『ブースター』がどれほどの効果があるのかを見定めるためにも「イスラエルの情勢は注視に値する」と言えるでしょう。


  Prime Minister Naftali Bennett spoke on Tuesday with the coalition party heads about the rising COVID infection rates, hours before the coronavirus cabinet meeting that's expected to take place this afternoon.

  Bennett said that further restrictions need to be already imposed, adding that within twenty days the number of critical patients is expected to rise to 800.

  A senior official in the Health Ministry told Haaretz on Tuesday that the ministry is laying the groundwork for implementing a lockdown during the September holiday period.

Israeli PM: Serious COVID Cases to Quadruple in 20 Days, We Must Impose New Restrictions


イスラエルでの新型コロナの感染状況

重症者数の推移

  イスラエルのベネット首相が「20日以内に重症者が800人超の可能性」と口にしたのは8月初旬です。当時の重症者数は約200人でした。

  イスラエルの重症者数は8月11日の時点で400人を突破。10日も経過しない間に『入院中の重症者数』が2倍になったのですから、8月下旬までの約10日間で現状(重症者数400人)の2倍になることはあり得ることです。

  その根拠となるのは「ワクチン接種歴ごとの年齢別・重症者数」です。


年齢階層別・重症者数(2021年8月11日現在)

  人口比で見ると『ワクチン未接種者』の方が圧倒的に重症者数が多いのですが、イスラエルは高齢者の約9割が2回のワクチン接種を完了しています。そのため、絶対数で『ワクチン接種完了者』の重症者数が無視できなくなっているのです。

  しかも、イスラエルでは「60歳以上の 70% は今年1月中に2回目のワクチン接種を終えている」のです。

  今後は「ワクチン接種効果が薄れる」と予想されていましたし、「ワクチン接種済者 x デルタ株」の組み合わせは良くないことが指摘されています。(ワクチン接種者がデルタ株に感染すると未接種者と同等量のウイルスを排出する)

  このままでは「座して死を待つ」に等しい状況ですから、国外からの批判を無視して『3回目のワクチン接種』に賭けることは政府として妥当な選択と言えるでしょう。


死者数(7日間平均)の推移

  また、ワクチン接種の効果を測定する上で重要となる『死者数』の数値が悪化していることも特筆点でしょう。

  イスラエルの現状は「(ワクチンの存在しなかった)昨夏と同水準」です。死亡リスクの高い70代以上が重症者の最大ボリュームですから、死者数の7日間平均は現状維持になるものと予測されます。


今後の見通し

  今後は「3度目のワクチン接種がどれだけ効くか」が最大の注目点です。

  イスラエル保健省のダッシュボードによりますと、70代以上の50%が3回目接種を完了。60代も40%が終えています。「この効果が統計に現れるかが」で測定すれば十分でしょう。

  なお、昨夏にイスラエルを襲った新型コロナ第2波のピークは「9月末から10月初旬」で、「死者は1日40人」の水準でした。これを下回った分が『ブースター効果で得た成果』と見積もることができると思われます。

  日本にイスラエルから発表された統計をそのまま流用すべきではありませんが、参考にはなるでしょう。今後の動向に注視する価値はあるはずです。