『新型コロナによる死者を減らすための自粛』を求めたのだから、第5波で死者数が減ることは朗報

  忽那賢志氏が『「新型コロナ 第5波は死亡者数が少ないから大丈夫」は本当か?』とのタイトルの記事を Yahoo! 個人に掲載しています。

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  第5波で死者数が減ったことは世間一般には朗報でしょう。なぜなら、死亡リスクが大きく下がることを意味するからです。忽那氏の主張は「医療側の身勝手なもの」と見なされ、相手にされない可能性が大です。


新型コロナ罹患によるリスクはケース・バイ・ケース

  まず、新型コロナに罹患した場合に起きることは千差万別です。大きく分類すると以下の4パターンになるでしょう。

  1. 新型コロナに感染した場合、
    1. ほぼ確実に死亡
    2. 医療の “適切な介入” があれば助かる
    3. 自力で回復
  2. そもそも感染しない

  これまでは『 I -ⅰに属する人(≒高齢者)』を守るために「全国民に自粛」が求められていました。しかし、医療を必要とするのは『 I -ⅱに属する人々』だけです。

  そもそも、『 I -ⅰに属する人々』が新型コロナに感染した順に亡くなっていくのは(常識的に)止むを得ないでしょう。

  『 I -ⅰに属する人々』を守るために多額の費用を投じてしまうと医療に回す予算が尽きて『 I -ⅱに属する人々』からも犠牲者が出る事態を招く恐れがあることに留意が必要です。


「死者数の減少」は歓迎すべきこと

  『新型コロナの死亡率』が下がったことは歓迎されるでしょう。特段の対処を追加で採っていないのであれば尚更です。

  ちなみに、忽那氏の現在の職場である大阪大学のある大阪府で2021年1月から6月に記録された『年齢別・人口10万人あたりの週別新規陽性者および死者』は以下のとおりです。

  『アルファ株』の感染が深刻だった「4月や5月」は新規陽性者数や死者数が「1月や2月よりも多い」という状況でした。それが7月以降は「(特に死者数が)劇的に改善」しているのです。

  ※ 1月〜6月までと比較して今年7月以降は「死者の軸(最大値)が10分の1」

  ワクチン接種を優先的に行った高齢者層では陽性者数の伸びは抑制されています。必然的に重症者病床に余裕が生まれる訳ですから、医療逼迫を持ち出して「陽性者数を減らすために自粛を」との要望は相手にされにくくなるでしょう。


中等症なら一般病院で対処すべき、医療従事者への優先接種はそれも目的

  医療側が「陽性者数を減らせ」と主張する理由は分からなくもありません。死亡率が大きく下がっているため、「適切な医療を施せなかったことが明るみに出やすい」という状況を回避したい思惑でしょう。

  患者の絶対数が少ないほど「業務に忙殺されたことでの見落とし」を防げる可能性が高まると考えられるからです。

  しかし、これは医療側の身勝手な論理です。新型コロナは中等症であるなら『高度医療機関』に搬送する必要はありません。基本的には “一般的な病院” で対処すべきでしょう。要するに『インフルエンザと同じ対応』をすれば済むことです。

  すべての医療従事者が「新型コロナワクチン優先接種の対象」となったのですから、『インフルエンザと同じ対応』をする障壁は医療機関側には存在しないはずです。

  医療機関の負荷が高い理由は「『陽性者は原則入院』および『医療費は無料』で生活保護受給者による医療の過剰受診と同じ問題が起きているから」です。

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社会保障について(財務省, PDF)

  是正すべき点から目を背け、診療報酬を稼ごうとする姿勢は世間に知られるほど反感を買うことを自覚すべきでしょう。


  日本の医療は『国民皆保険制度』であり、患者が支払っているのは全体の1割です。残りの9割は「税金と健康な現役世代が払う保険料」ですから経済に損害を与える “浅はかな提言” は慎むべき時があることを学ぶ必要があるはずです。