「(2015年の時点で)4人に1人は医療機関以外で死亡している」との事実を知らない倉持仁氏

 菅首相が「新型コロナ陽性者は原則全員入院」の “異常事態” を見直す方針を発表したことに対し、「重症者以外は自宅療養」とのデマを流した TBS の番組で倉持仁氏が「自宅で死ぬことがあってはならぬ」と舌鋒鋭く批判を展開しています。

 毎日新聞(や系列局 TBS)のデマに釣られるのは番組出演者として仕方のない側面もありますが、「毎年 20〜30 万人は病院以外で死亡している事実」を無視した批判は論外と言わざるを得ないでしょう。

 

倉持仁氏の発言

 倉持氏が番組で行った発言を報じたニュース(の1つ)は以下のものです。

 多くのテレビに出演している「インターパーク倉持呼吸器内科」(宇都宮市)の倉持仁院長(49)は、菅首相を「無為無策 自宅で死ぬなどあってはならぬ あんぽんたんとはもはや言わじ」と強い口調で批判。「この人に政治を司る資格なし!すぐやめてください」と切り捨てた。

現役医師も菅首相にレッドカード!重症患者以外は自宅療養?「あんぽんたん!」

 放送されたのは8月3日で TBS 『Nスタ』での出来事でした。ただ、「中等症でも自宅療養」と菅首相が発言していないことをスクープしたのは TBS を系列局による毎日新聞です。

 したがって、“毎日新聞のデマを使った TBS のニュース” に倉持氏の問題発言が上乗せされて大問題になった事案と言えるでしょう。

 

倉持仁氏が見落としている事実

 まず、倉持氏は統計を確認しなければなりません。

死亡数の将来推計

 厚労省の中医協が第411回総会で示した資料(総ー4ー2, PDF)によりますと、2015年の時点で「4人に1人は病院外での死亡」であることが読み取れます。

 要するに、日本の医療機関で看取ることができる死者数は「年間で100万人強」なのです。

 日本の年間死亡者数は2021年で140万人前後ですから、今年は約40万人が病院以外で死亡すると予想されています。「自宅で死ぬことがあってはならぬ」など統計の確認を怠る無責任な人物の発言に過ぎません。

 

 症状の出ていない患者が「医療による介入不要」を理由に自宅療養になるのは当たり前です。2類感染症に分類されている結核でもその対応が採られているからです。

 この事実を無視して「重症者以外は原則自宅療養」と発言内容とは異なるデマを流したままで訂正せずに逃げている毎日新聞を倉持氏は「報道を司る資格なし!すぐ辞めて下さい」と切り捨てるべきでしょう。

 毎日新聞(や TBS)と倉持氏のどちらが先に『3日に行った報道および発言』の訂正を行うのかが注目点になっているのではないでしょうか。