藤井直敬氏の「今のコロナは罹患すれば年齢関係なしに一定確率で死ぬ」は統計を無視した主張
藤井直敬氏が「若い人たちが、今のコロナは罹患すれば年齢関係なしに一定確率で死ぬ」とのツイートを行っています。
医師の資格を有する人物が統計に示されていない誤りをツイートすることは問題と言わざるを得ないでしょう。このツイートは「デマ」と糾弾されても止むを得ないほどの間違いが含まれているからです。
藤井直敬氏のツイート内容
藤井氏が行ったツイートの内容は以下のものです。
若い人たちが、今のコロナは罹患すれば年齢関係なしに一定確率で死ぬ、もしくは長期の後遺症が発生することを知らないなら周知する努力は必要だし、知った上での行動なら残念。自分で選べる未来ってそうは無いからね。
— Naotaka Fujii (@NaotakaFujii) 2021年7月30日
主張は「若者が新型コロナに罹患すれば年齢関係なしに一定確率で死ぬ」とのものですが、これが事実と異なるのです。それを裏付ける統計データがあるなら、世間に対して提示する責務を負っているのは藤井氏です。
事実
新型コロナによる死亡率は高齢者ほど高い
まず、新型コロナで死亡する確率は「高齢者ほど高い」と示されています。
厚労省が発表(PDF)した2021年7月28日18時時点での『年齢階級別死亡率』では「高齢者ほど高い」ことが見て取れます。
累計で若者の死亡率は「0.0% を下回っている状況」にあり、70代の 5.1% や80代以上の 14.2% とは2桁以上も違いが存在します。したがって、「年齢関係なしに」との主張は不適切と言えるでしょう。
2021年7月下旬の年齢階級別死亡率も同様
「藤井氏は “今のコロナは” と条件を付けているので『累計での死亡率』を用いるのはおかしい」と考える人もいるでしょう。この場合は『2021年7月下旬における年齢階級別死亡率』を厚労省の発表値から算出すれば良いのです。
7/14 〜 21 | 7/21 〜 28 | |||||
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陽性者 | 死者 | 死亡率 | 陽性者 | 死者 | 死亡率 | |
0-9 | 1085 | 0 | 0% | 1615 | 0 | 0% |
10s | 2365 | 0 | 0% | 3920 | 0 | 0% |
20s | 6899 | 0 | 0% | 11006 | 1 | 0.01% |
30s | 4194 | 2 | 0.05% | 6829 | 0 | 0% |
40s | 3942 | 3 | 0.08% | 5907 | 2 | 0.03% |
50s | 3008 | 0 | 0% | 4489 | 4 | 0.09% |
60s | 1075 | 11 | 1.02% | 1462 | 8 | 0.55% |
70s | 473 | 15 | 3.17% | 540 | 14 | 2.59% |
80+ | 326 | 54 | 16.56% | 397 | 22 | 5.54% |
「年齢関係なしに一定確率で死ぬ」で死亡するなら、『若者の死亡率』と『高齢者の死亡率』は誤差の範囲内のはずです。しかし、20代や30代の新型コロナによる死亡率は高齢者よりも2桁以上も少ないのです。
この値は『累計での年齢階級別死亡率』と同じです。
もちろん、藤井氏は「『若者も新型コロナに罹患すれば一定確率(= 0.01% 未満)で亡くなる』と言ったが『高齢者と同じ確率(=80代だと約15%)で亡くなる』との趣旨ではない」と自身の主張を弁解することは可能です。
ただ、上述の主張は詭弁ですから批判は免れないと思われます。新型コロナを過剰に煽る人物を野放しにしていると警鐘が意味をなさなくなることへの危機感を感染症対策の専門家は持つべきではないでしょうか。