『物価高を進行させる物価高対策』を提言し、賛同・導入を呼びかける藤田孝典氏
貧困問題に取り組んでいる藤田孝典氏が『物価高対策』として、現金や現物給付・減税・既存の社会保障強化を提言するツイートで賛同を募っています。
毎日Twitterデモ。
— 藤田孝典 (@fujitatakanori) 2022年6月20日
物価高対策として、現金・現物給付、減税、既存の社会保障強化など様々な手法があります。企業、業界ばかりでなく、庶民を支えないと更に社会経済が衰退します。一部の利権政治から脱して、まともな物価高対策を講じましょう。#Twitter一揆0620#一律給付金で物価高対策をして
藤田氏のツイートで問題なのは「いずれの対策も物価高を進行させる政策」であることです。「貧困問題で苦しむ人を増やしたくない」と考えているなら、経済政策の基礎から勉強をやり直すべきでしょう。
インフレ下での現金給付や現物給付は物価高を加速させる
まず、物価高が起きる原因は以下の2つに分類できます。日本はその両方による物価高に見舞われており、『効果のある物価高対策』は限られていることが実情です。
- モノの供給が減少したことによる争奪戦で価格が上昇
- 例: カーボンニュートラル政策による石油資源の供給量の減少
- モノを購入する金品の価値が減少
- バラマキ政策による通貨価値の毀損(=円安)
藤田氏の求める『現金給付』をすると「日本円の価値が下がる」ため、“100円で買えていたモノ” が100円では買えなくなります。これは市場での貨幣流通量が増えることが理由です。
つまり、“100円で買えていたモノ” を物価が上がっている状況下でも100円で買いたいのであれば『(利上げなど)市場での貨幣流通量を減らす政策』が不可避なのです。
また、現物給付を実施しても結果は現金給付と同じです。政府が「現金を給付する」か「現金で購入したモノを配給する」かの違いでしかないため、物価上昇の歯止めとしての効果は期待できません。
『歳入額と歳出額が一致する均衡財政を保たない減税』だと赤字国債の発行で物価高は進行する
藤田氏は『まともな物価高対策』として「減税」も選択肢にあげていますが、減税による歳入の減少分を歳出のカットで補うことが条件です。これをしない場合は物価高(=インフレ)が進行します。
財務省の財政制度分科会が資料(PDF)で示しているように、日本は1990年度に特例公債の発行から脱却したものの社会保障費の増加を賄うための特例公債(=赤字国債)の発行が激増している状況です。
2021年度に発行した赤字国債は37.3兆円。消費税による税収は約21.5兆円に過ぎません。「高齢者への社会保障費がいかに巨額であるか」を物語っていると言えるでしょう。
減税は「市場での貨幣流通量を増やす効果」があります。これは『利上げなど市場の貨幣流通量を減らす政策』とは逆の働きをするからです。つまり、物価高を刺激する政策であり、物価高対策としては間違いなのです。
40兆円弱の税金が投入されている社会保障予算を拡充しても物価高は加速する
藤田氏は「既存の社会保障強化」を訴えていますが、日本政府は社会保障費として年間40兆円弱の公費負担分を(赤字国債を発行して将来世代にツケを回す形で)捻出しているのです。
つまり、社会保障費を増やすほど日本政府が発行する赤字国債の額も増加し、日本円の貨幣価値がより毀損されることになるのです。
高齢化が進む日本では高齢者の絶対数が増加しており、増え続ける社会保障費への歯止めをかけることができていません。この状況で社会保障予算を拡充するとバラマキにしかならないのは明らかです。
そして『バラマキ政策』は貨幣価値を毀損するのですから、物価高が加速することは避けられないでしょう。貧困層を増やすことで貧困支援団体の活躍の場は増えますが、社会全体にとって良いことではありません。
藤田氏の提言は本末転倒であることを知る必要があると思われます。